シェーグレン症候群の症状
シェーグレン症候では、外分泌腺のなかでも分泌液を外に出す道管とよばれる部分と分泌液をつくる腺房の部分に炎症がおこるため、分泌液が減少することによる乾燥症状が出現します。ただし、高齢者では加齢による乾燥症を呈することがあります。また、節遮断薬、向精神薬などの薬の使用によっても乾燥症を呈することがあるので、注意を要します。
目の症状
涙腺に炎症がおこるために、涙液の量が減ります。涙液は角膜を覆うフィルムのようなものなので、涙液が減ると角膜の表面にキズができやすくなってしまいます。
また、涙液が減ると「眼がごろごろする」、「目やにが多くなった」、「光がまぶしい」などの症状が出てきます。充血もおこしやすくなります。
口の症状
口の中では唾液腺に炎症がおこります。このため、唾液の分泌が減少するために、「口が乾く」、「水がないと食事がしにくい」、「むし歯が多くなった」などの症状が出ます。唾液の中には抗菌物質が入っているので、唾液が減るとむし歯が多くなってしまいます。
唾液腺の腫れ
唾液腺には大唾液腺と小唾液腺があります。大唾液腺とは、耳下腺、顎下腹、舌下腺の三つですが、このうちシューグレン症候群では耳下腺が腫れることがあります。この場合は両側が一度に腫れるため、よく「おたふくかぜ(=流行性耳下腺炎)」と間違えられることがあります。ときには片側だけが腫れることもあり、その場合には唾液腺の中に石ができる唾石症との見分けが必要になることもあります。ひどい場合には顎下腺も腫れることがあります。
消化器症状
食道が乾燥して、食物が飲み込みにくくなったり、つっかえる感じがすることがあります。
胃酸の分泌低下や、消化不良がみられることがあります。
腎臓の病変
腎臓に炎症(間質性腎炎)が起こりやすくなります。おかされるのは腎臓の組織そのものではなく、その間のにかわ部分で、ここを間質といいます。
腎間質は、尿代謝のバランスをとるところですが、炎症によってそのバランスが要くなると、血液が酸性に傾いたり(尿細管アシドーシス)、血液中のカリウムが減ったりします。間質性腎炎や尿細管アシドーシスは、ほかの膠原病にはあまりみられない、シェーグレン症候群に特異性が高い病態です。
呼吸器の病変
間質性肺炎は、シェーグレン症候群でも合併することがあります。
血液の異常
●炎症反応がなくCRPが正常なのに、赤沈が高くなります。
●血液中にあるタンパク質のバランスがくずれ、ガンマグロブリンが非常に多くなります。高ガンマグロブリン血症ではときに血流が悪くなり、皮膚に紫斑が出たり、さらには悪性リンパ腫が続発することがあります。悪性リンパ腫は、まれである、未然に防ぐ方法はない、発症しても治療可能、という理由から、シェーグレン症候群の人が特別に心配しなければいけない問題ではありません。
●リウマトイド(リウマチ) 因子や、抗核抗体などの自己抗体が陽性になります。抗核抗体のなかでは、SS-A抗体とSS-B抗体があらわれるのが特徴です。SS-A抗体は、全身性エリテマトーデスなどほかの膠原病にもみられますが、SS-B抗体はシェーグレン症候群に特異性が高いものです。
●SS-A抗体は、胎児に心ブロックを起こすリスク因子になります。そのため、この抗体が陽性の妊婦は、胎児心音をモニターして出産に備える必要があります。状態によって、帝王切開が必要になるからです。
その他の症状
関節痛はよくみられる症状ですが、一般にはあまりひどくなりません。しかし、なかには関節リウマチを発症することもありますので、対称性で多発性の関節炎がおこってきた場合には 関節リウマチの合併を考える必要があります。
このほか、 レイノー現象、 紫斑、 リンパ腺の腫れなどがおこることもあります。とくにリンパ腺があちこち腫れてきて、その腫れがひかないときには専門医に受診してください。まれですが 悪性リンパ腫を合併していることがあります。この病気では薬剤アレルギーが多い傾向があるので、やたらに薬をのむのは考えものです。のみたい薬があれば主治医と相談しましょう。
腺外症状
シェーグレン症候群では、甲状腺が腫れることがよくあります。多いのは甲状腺ホルモンが欠乏する橋本病ですが、逆に甲状腺ホルモンが出すぎるバセドウ病がおこることもあります。