膠原病

筋炎(多発性筋炎・皮膚筋炎)とは?


体を動かす骨格筋(横紋筋)に炎症が起こり、筋力が低下していく多発性筋炎。これに似ていて、特有の皮膚症状が加わるのが皮膚筋炎です。がんを伴うことがあり、注意が必要です。

筋炎の特徴

筋炎とは?

人間の筋肉
人間の筋肉には、 骨格筋平滑筋(内臓の働きを維持)、 心筋(心臓を形づくる)の3つの種類があります。このなかで、体を動かす原動力となるのが骨格筋です。横縞模様のある長い線維(細胞)の束でできていて、「 横紋筋」とも呼ばれます。
腕、指、肩、くび、腰、下肢などにある横紋筋は、自分の意志で動かせる筋肉です。これが収縮することで私たちの体は働きます。 筋炎とは、この横紋筋の一部に炎症が起こり、収縮がうまくいかなくなって筋力が低下していく病気です。

筋炎の原因

筋炎はウイルスなどによっても起こりますが、多発性筋炎/皮膚筋炎は、原因が不明(特発性)の炎症性疾患ですが、いくつかの自己抗体が認められていて、自己免疫のメカニズムが発症にかかわるとされています。ただし、病気の原因となる決定的な自己抗体は、まだ見つかっていない状態です。多発性筋炎では、筋肉の組織に免疫細胞のリンパ球やマクロファージがたくさん集まり(浸潤して)、筋肉の細胞異常を起こすと考えられます。一方、唇の微小血管をおかして炎症を起こすと考えられています。

筋炎の有病率・男女比・年齢層

多発性筋炎は、近位筋(体の中心部に近い筋肉)がおかされることが多く、おもに四肢やくびすじの筋力が、左右対称に低下するのが特徴です。同様の症状に加えて、特有の皮膚症状を伴うのが皮膚筋炎です。病理的には、それぞれは別の病気と考えられますが、同じような筋炎症状があるところから一緒にして、多発性筋炎/皮膚筋炎とよく書かれます。
日本での有病率は10万人に6人くらいで、患者数は6000人余り。発病の男女比は、成人は1対2で、女性の方が少し多くなっています。乳児から高齢者まで、幅広い年齢層で起こりますが、小児皮膚筋炎(子どもの多発性筋炎はきわめてまれ)は5~15歳に、成人の多発性筋炎/皮膚筋炎は40~60歳に、発症のピークがみられます。

がんや他の膠原病を合併することも…

皮膚筋炎には、ほかの膠原病にはみられない特徴があります。それは悪性腫瘍(がん) とのかかわりです。40歳以上の人には、がんに先立って筋炎が起こったり、筋炎よりも先にがんがあらわれたり、がんと筋炎とが同時に発症したりすることがあります。
全身性エリテマトーデスや強皮症など、ほかの膠原病(結合組織病)が合併したり、難治性の間貿性肺炎が合併しやすいという特徴もあります。
がんがあったり、重症の間質性肺炎が合併すると、筋炎の予後も左右されるので、早急に治療しなければなりません。
筋炎の種類

多発性筋炎

30~50歳代の女性に多く、大半がゆっくりと症状が出ます。筋炎のなかではこのタイプが最も多くみられます。

皮膚筋炎

皮膚筋炎
年齢的には広く10~70歳代におこります。女性に多い病気ですが、男性にもみられます。発疹が特徴的で、むくみを伴った薄紫色の発疹が顔面、まぶた、前胸部、手・ひじ・ひざ関節の前面に出現します。この発疹はその色調から、専門的には へリオトロープ疹とよばれています。また、手の指の関節直上に発疹がみられることもあり、これは ゴツトロン徴候とよばれています。くびから前胸部にかけて、日光にあたる部分に色素沈着を伴う発疹がみられることもあります。ちょうどVネックのセーターを着たときのようになるので、 Vネックサインともよばれます。これらの発疹は皮膚筋炎に特徴的に出現するため、診断の一助になります。

悪性腫瘍に伴う筋炎

数パーセントの頻度ですが、悪性腫瘍に筋炎を合併することがあります。この場合には手術で悪性腫瘍を摘出すると、ほとんどの例で筋炎は治ってしまいます。

小児の筋炎

子どもでは男女の差はなく、筋炎がみられることがあります。ときに皮膚の石灰化を伴うのが特徴です。ステロイド薬がよく効きます。

膠原病に合併する筋炎

混合性結合組織病(MCTD)に合併することが多いのですが、このほか全身性エリマトーデス(SLE)強皮症(SSC)シェーグレン症候群などに合併することもあります。