筋炎(多発性筋炎・皮膚筋炎)とは?
筋炎とは?
腕、指、肩、くび、腰、下肢などにある横紋筋は、自分の意志で動かせる筋肉です。これが収縮することで私たちの体は働きます。 筋炎とは、この横紋筋の一部に炎症が起こり、収縮がうまくいかなくなって筋力が低下していく病気です。
筋炎の原因
筋炎はウイルスなどによっても起こりますが、多発性筋炎/皮膚筋炎は、原因が不明(特発性)の炎症性疾患ですが、いくつかの自己抗体が認められていて、自己免疫のメカニズムが発症にかかわるとされています。ただし、病気の原因となる決定的な自己抗体は、まだ見つかっていない状態です。多発性筋炎では、筋肉の組織に免疫細胞のリンパ球やマクロファージがたくさん集まり(浸潤して)、筋肉の細胞異常を起こすと考えられます。一方、唇の微小血管をおかして炎症を起こすと考えられています。
筋炎の有病率・男女比・年齢層
多発性筋炎は、近位筋(体の中心部に近い筋肉)がおかされることが多く、おもに四肢やくびすじの筋力が、左右対称に低下するのが特徴です。同様の症状に加えて、特有の皮膚症状を伴うのが皮膚筋炎です。病理的には、それぞれは別の病気と考えられますが、同じような筋炎症状があるところから一緒にして、多発性筋炎/皮膚筋炎とよく書かれます。
日本での有病率は10万人に6人くらいで、患者数は6000人余り。発病の男女比は、成人は1対2で、女性の方が少し多くなっています。乳児から高齢者まで、幅広い年齢層で起こりますが、小児皮膚筋炎(子どもの多発性筋炎はきわめてまれ)は5~15歳に、成人の多発性筋炎/皮膚筋炎は40~60歳に、発症のピークがみられます。
がんや他の膠原病を合併することも…
全身性エリテマトーデスや強皮症など、ほかの膠原病(結合組織病)が合併したり、難治性の間貿性肺炎が合併しやすいという特徴もあります。
がんがあったり、重症の間質性肺炎が合併すると、筋炎の予後も左右されるので、早急に治療しなければなりません。
多発性筋炎
30~50歳代の女性に多く、大半がゆっくりと症状が出ます。筋炎のなかではこのタイプが最も多くみられます。
皮膚筋炎
悪性腫瘍に伴う筋炎
数パーセントの頻度ですが、悪性腫瘍に筋炎を合併することがあります。この場合には手術で悪性腫瘍を摘出すると、ほとんどの例で筋炎は治ってしまいます。
小児の筋炎
子どもでは男女の差はなく、筋炎がみられることがあります。ときに皮膚の石灰化を伴うのが特徴です。ステロイド薬がよく効きます。
膠原病に合併する筋炎
混合性結合組織病(MCTD)に合併することが多いのですが、このほか全身性エリマトーデス(SLE)、強皮症(SSC)、シェーグレン症候群などに合併することもあります。