強皮症の治療
強皮症にとって治療の基本となる症状は、皮膚硬化と慢性肺線維症ですが、これに対する治療法はまだ確立されていません。この点は、膠原病のなかでも独特です。そこで現状では、次のような考え方が選択肢のひとつになっています。皮膚硬化は、いずれ自然に軟化する。それに、急性ではない肺線維化に治療は効かない。治療にはそれなりに副作用が伴うので、重大な臓器障害が起こったときに、対症療法を行うことを除いて、とくに治療は行わない~という考え方です。
その一方で、ステロイドや血漿浄化法などを試みるという考え方もあります。現在、行われている治療法の主なものを見てみます。
対症的治療法
まず、手指を冷やさないことです。そのためには、寒くなったら手袋を着用してください。末梢循環が悪くなると、小さな傷でも治りにくくなってしまいます。携帯用の使い捨て「カイロ」をいつもポケットの中に入れておくのもよい方法です。
冬場の炊事や洗濯などでは冷たい水を使わずに、できるだけ温水を使うようにしてください。また、レイノー現象がおこる人の喫煙は厳禁です。たばこの中のニコチンには、血管を強く収縮させる作用があるので、喫煙をするとレイノー現象が悪化してしまいます。
末梢循環改善薬
末梢の循環をよくするために、カルシウム拮抗薬(アダラートなど)、ビタミンE(ユベラなど)、血小板凝集抑制薬(パナルジン、プレタール、ベルサンチンなど)などが使われます。
レイノー現象には、経口のプロスタグランジン製剤(オパルモン、プロサイリンなど)が使われますが、重症の場合にはプロスタグランジン製剤(プロスタンディン)の点滴が使われます。このプロスタグランジン製剤を脂肪粒子の中に封入した注射製剤(リプル、パルクス)は、指先などにできた難治性潰瘍の治療に有効です。
線維化防止薬
線維化を防止するためには、従来からペニシラミン(メタルカプターゼ)が使われてきました。しかし、それほど強い効果はありません。最近では、保険適用外ですがシクロスポリンが使われることもあります。
ステロイド薬
ステロイド薬は、浮腫期や比較的早期の硬化期には有効です。ただし、萎縮期に入ってしまうともう効果はありません。
また、心膜炎、筋炎、間質性肺炎がある場合にもステロイド薬は使用されます。強皮症腎がおこったときはステロイド薬の大量投与に加えて降圧剤が使われます。
その他
関節炎がおこったときには非ステロイド系抗炎症薬が使われます。また、逆流性食道炎がおこったときには、H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターがよく効きます。
消化管の蠕動低下に対しては、メトロプラミド(プリンペラン)、シサプリド(アセナリン、リサモール)などの消化管機能調節薬が使われます。