血管炎症候群とは?
血管に炎症が起こる病気のグループの総称
いずれの病気も血管の壁に強い炎症がおこる点で共通しています。また、血管の壁に壊死がおこるので、壊死性血管炎ともよばれています。
このグループには多くの病気が含まれますが、血管系以外の臓器に炎症が起こり、その影響を受けて二次的に血管に炎症が及んだもの(肺炎や肝炎による肺や肝臓の血管の炎症など)は除きます。
血管炎症候群では、炎症の場は血管の周囲ではなく血管の壁にあり、そこには免疫異常のメカニズムがかかわります。免疫複合体が血管に沈着して、炎症を誘発すると考えられています。
免疫複合体が原因に?
免疫複合体は、抗原と、それに反応する抗体が結びついたもので、多くの膠原病の誘因になります。たとえば全身性エリテマトーデスでは、自分の細胞核にあるDNAが自己抗原になり、それに対する抗体と結びつき、免疫複合体になります。
血管炎症候群の病気では、一部の病態に伴うリウマトイド因子(免疫グロブリンというタンパク質を抗原として反応する自己抗体)や、クリオグロブリン(温度が下がると凝集するタンパク質)が、免疫複合体をつくることが知られています。またクリオグロブリン怪血管炎では、C型肝炎ウイルスを抗原とする免疫複合体が原因になるとも考えられています。
ただし血管炎のほとんどは、こういった病因ではなく、実際にあらわれる症状や病理などを総合し、定義分類されています。
障害される血管のサイズによって分類
大血管炎
巨細胞血管炎(側頭動脈炎)
大動脈と、そのおもな分枝に起こる肉芽腫性血管炎。頸動脈の頭蓋外の分枝に、高頻度で起こる。側頭動脈にも、しばしば病変がみられる。発症年齢は、ふつう50歳以上。リウマチ性多発筋病症と関連がある。
高安動脈炎
大動脈と、そのおもな分枝の肉芽腫性炎症。ふつう、発症するのは50歳以下で、ピークは20代。女性に多い。
中型血管炎
古典的結節性多発動脈炎
中から小の動脈の壊死性炎症。全身に及ぶが、なかでも腎臓、脳、心臓、腸管、皮膚の動脈に起こる。
川崎病
粘膜皮膚リンパ節炎を伴う冠状動脈の炎症。静脈にも病変を伴う。幼児以下にしか起きない。
小血管炎
ウェゲナー肉芽腫症
肉芽腫性炎症と、小・中血管の壊死性炎症(細動脈、毛細血管、細静脈を含む)。目、耳、肺、腎臓に障害が出る。
アレルギー性肉芽腫性血管炎
肉芽腫性炎症と小・中血管炎。好酸球を多く含む。中小の血管にも壊死性炎症がみられる。気管支ぜんそくや末梢神経障害を伴う。
顕微鏡的多発血管炎
壊死性血管炎で、免疫複合体の沈着はみられない。細動脈、毛細血管、細静脈などの小血管に変化がみられる。壊死性の糸球体炎の頻度が高く、肺毛細血管炎も伴う。
ヘノッホ・シェーンライン紫斑病
lgAグロブリンが主体の免疫複合体が沈着する小血管の血管炎。通常は皮膚、腸管、腎糸球体が障害され、関節炎を伴う。
本態性クリオグロブリン血症
血清中にクリオグロブリンがみられ、血管壁に免疫複合体の沈着がみられる血管炎。おもに小血管に障害を受け、皮膚と腎糸球体が、しばしばおかされる。
白血球破砕性皮膚血管炎
皮膚に限局した、白血球破砕性血管炎。全身性血管炎や糸球体腎炎は伴わない。