膠原病

関節リウマチの治療


リウマチ治療の最終目標は、患者さんの生活の質、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を高めることです。そのために、次の四つが治療の具体的な目標になります。


①炎症や痛みの軽減
②免疫異常の是正
③関節機能の維持・強化・再建
④関節変形、拘縮、強直の予防


この目標を達成するために、薬物療法、理学療法、手術療法などを、症状によって適宜に組み合わせて治療を行います。

関節リウマチの治療の図

薬物療法

ここでは、薬についてひととおり紹介していきたいと思います。

非ステロイド系抗炎症薬

まず最初に用いられるのは非ステロイド系抗炎症薬です。この薬は、シクロオキゲナーゼという酵素の活性を阻害することで、プロスタグランジンの合成をも阻害するため、鎮痛作用や抗炎症作用をもっています。

抗リウマチ薬

リウマチの活動性が高い場合や、進行性の場合には、積極的に抗リウマチ薬が用いられます。金製剤、ブシラミン、サラゾスルファピリジン、ペニシラミン、メトトレキセート(MTX) などがありますが、いずれも効果が発揮されるまでに時間がかかるうえに、直接の抗炎症作用はありません。
したがって、抗リウマチ薬が効いてくるまでは非ステロイド系抗炎症薬やステロイド薬と一緒に使われます。抗リウマチ薬のなかでもメトトレキサートは、ほかの抗リウマチ菜と比べても高い有効性を示しています。しかも、骨びらんの進行を遅らせることが明らかになっている薬です。
しかし、その一方ではさまざまな副作用があるために、注意して使わなければなりません。とくに骨髄抑制、肝障害、間質性肺炎などの重篤な副作用をおこすことがあります。

ステロイド薬 

ステロイド薬は第一に選択される薬剤ではありませんが、活動性の高いリウマチに対して補助的に用いられ、日常労作の改善に効果的です。
しかし、プレドニゾロン換算で5~10mg/目以上を投与することはなく、抗リウマチ薬の効果が発現したらすみやかに減日要し、できれば中止します。

生物製剤

すでに欧米では、抗TNFα抗体、可溶性TNFαレセプター(エンプレル) などの生物製剤の使用が認可され、高い有効性が注目されています。とくにこれらの薬のすばらしいところは、約60%の症例において軟骨や骨の破壊の進行を抑えられる点です。
しかしその一方で、感染症をはじめとする副作用がおこりうること、高価であること、注射でしか使用できないこと、などのさまざまな問題点もあります。
リハビリテーション

リハビリテーションには、理学療法、運動療法、作業療法、補助具療法などがあります。リウマチでは、たとえどんなによい治療をしていても、並行してきちんとしたリハビリテーションができていなければなんにもなりません。リハビリテーションのなかでも基本となるのは、 運動療法理学療法です。
手術療法

滑膜切除術

以前は、炎症が激しい関節に対して滑膜切除術がよく行われました。しかし、基本的な薬物療法を十分に行わないで滑膜切除術をしても、時間が経てばまた再発してしまいます。このため、最近ではあまり行われていません。

人工関節置換術

人工関節置換術
関節機能の再建を目的に行われる手術です。ひざと股関節でよく行われますが、最近では人工関節材料の開発によって手術成績が著しく改善されています。
また、耐用年数も飛躍的に伸びています。しかし、ひじや手の手術成績はまだそれほどよくありません。どちらかというと、体重を支える大きな関節のほうが手術に適しているようです。

関節固定術

関節固定術
リウマチでは頚椎にも変化がおこります。とくに、環軸関節の亜脱臼がある場合や、頸椎起が頭蓋骨内に陥入している場合には、頸椎の固定術が行われます。頸椎の変化を放置すると、神経が圧迫されて手足のしびれやまひが出ることがあります。また、ひどいときは突然死の原因にもなります。したがって、手のしびれのような症状が出てきたときには、頸椎の手術を考えなければなりません。
手首や足首でも痛みが強いときに固定術を行うことがあります。しかし、痛みはとれても関節が動かなくなってしまうために、かえって日常生活において不便になることもあります。