筋炎(多発性筋炎・皮膚筋炎)の検査と診断
多発性筋炎/皮膚筋炎の診断を確定したり、経過をみるために、以下のような検査を行います。
血液検査
筋肉が破壊されると、筋肉から血液にCK(クレアチンキナーゼ)という筋原性酵素が出てくるのでそれを調べます。アルドラーゼという酵素を調べることもあります。
ただし筋炎と診断し、治療を始める時点でも、CKの上昇がないケースがあります。筋炎の1~5%は、CKが正常です。このようなケースでも、アルドラーゼの軽度上昇はみられるので、診断の材料になります。
ほかに、ミオグロビン(筋肉特有のタンパク)、GOT(血清トランスアミナーゼ。肝細胞に豊富に含まれる酵素)、LDH(乳酸脱水素酵素。すべての細胞にある)などの物質も、筋肉に炎症があると血中でふえてくるため、調べることがあります。
抗体検査(血清検査)
抗核抗体は、筋炎の人の約半数に、また、抗アミノアシルt-RNA合成酵素抗体は約20~30%にみられます。ただしもっていない人も多く、この抗体がないからといって筋炎を否定することはできません。
筋雷図
筋炎が疑われるときには、その筋肉に細い針を刺して筋電図をとります。もし筋炎であった場合には、特有の所見がえられます。また、神経の病気でも筋肉が萎縮しますが、筋電図をとることで、それが筋肉自体の異常によるものか、それとも神経の異常によるものかを区別することができます。
筋肉の生検
筋電図で陽性になった場合に、筋炎を確定するために行います。組織を採取するときは、陽性を示した筋とは反対の側で行います(針をさすことで生じた炎症細胞と区別するため)。
MRI検査
間質性肺炎の診断
まず胸部X線撮影が行われますが、間質性肺炎の疑いがあれば胸部CT検査が行われます。また、肺ガリウムシンチグラフィという特殊な検査も行われます。このほか、気管支鏡を用いた気管支肺胞洗浄(BAL)や経気管支肺生検が行われることもあります。
血清学的検査では血清KL=6が用いられます。この検査は日本で開発されたものですが、間質性肺炎の診断に役に立つばかりか、その程度を知ることができ、治療経過をみるために有用です。
間質性肺炎とは
空咳、息切れなどの症状に気づいたときは、間質性肺炎の疑いがあるので主治医と相談してください。
筋炎とまざらわしい病気
筋炎といちばん間違えやすいのは甲状腺機能低下症です。この病気でもクレアチンキナーゼ(CK)やアルドラーゼなどの筋原性酵素が血中で増加します。しかし、甲状腺ホルモンを測定することで簡単に見わけることができます。
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーという筋肉の病気でも筋原性酵素の増加がみられます。しかし、この病気の大半は遺伝性ですので、区別するのはそうむずかしくありません。
重症筋無力症
重症筋無力症でも筋力が低下しますが、この病気では眼に症状が出るのが特徴的です。まぶたを吊り上げる筋肉が侵されるために、まぶたが下がってきます。しかし、血液検査では筋原性酵素は増加しません。
封入体性筋炎
封入体性筋炎は高齢の男性に多く、数年にわたりゆっくりと進行すること、非対称性でからだから離れた遠位筋群の病変が目立つことなどから区別することができます。
このほか、筋原性酵素が血中に増加する病気としては、心筋梗塞、薬剤性横紋筋融解症、ウイルス性筋炎などがありますが、診断は専門医にとってそうむずかしいものではありません。
皮膚筋炎と悪性腫瘍
大人にみられる皮膚筋炎では、そのうちの約30%に腫瘍を合併するとの報告があります。この傾向は年をとるともっとはっきりし、50歳を超えると約50%ともいわれています。
合併する悪性腫瘍の種類ですが、固形がんであれば何でもみられます。このため、中年以降の皮膚筋炎の患者さんの場合には、悪性腫瘍の検索をすることが大切になります。