大動脈炎症候群(高安病)の症状と治療
大動脈炎症候群(高安病)は俗に脈なし病といわれ、日本の若い女性に多い病気です。初期症状は発熱や貧血が多く見られます。大動脈炎症候群(高安病)の症状と治療について紹介していきます。
日本をはじめアジアの若い女性に多い病気
心臓から送り出される血液は大動脈に行き、枝分かれした動脈に流れ、全身の毛細血管へと広がっていきます。高安病で炎症が起こるのは、この心臓から出て間もない大動脈(動脈本幹)と、そこから出て脳や腎臓などの臓器に至るまでのおもな分枝(枝分かれするところ)。さらに肺動脈にも起こります。大型の動脈だけで、手足や臓器内部の中・小動脈には起こりません。炎症のある動脈では内径が細くなり、血液の流れが悪くなっていきます。どの動脈にも一様に炎症が起こるわけではなく、部分的で、また部位も患者さんによって異なります。そのため、血行障害の起こる臓器も人それぞれです。
同じ病気でも、患者さんによってあらわれる病態は違ってきます。理由はわかりませんが、 日本をはじめアジアの若い女性に多い病気で、欧米では比較的少ないとされています。発病は、20代をピークに、小児から40代までみられます。男女比は1対10。日本の患者数は約5200人余りです(特定疾患申請数一2000年)。
初期症状は発熱や貧血
手に行く動脈がおかされると、手が冷たくだるくなる、手作業をすると手が疲れやすくなる、手の脈がふれにくくなる、左右の血庄に差が出る、といったことも起こります。
腎臓に行く動脈がおかされると、垂度の高血圧になり、若い人でも脳出血を起こすことがあります。心臓の出口と大動脈が接続する部分の弁に圧力がかかって 大動脈弁閉鎖不 全症になることがあり、呼吸困難、むくみ、胸痛など心不全の症状がみられます。肺動脈が障害されると、一時的にせきやたんが出ます。症状は患者さんによって異なりますし、このような症状が1人にすべて出るわけではありません。
高安病を早期発見するために
微熱や体のだるさは、そんなに特別なことではありません。貧血で悩んでいる女性も、よく見かけます。高安病の初期にあらわれるのは、こういったよくある症状なので、どうしても見過ごされてしまいます。35歳で高安動脈炎と診断された女性は、その10年ほど前に、会社の健康診断で脈がふれないことを指摘され、体の不調もあったものの、そのあとに脈がふれたので、そのままにしてしまったと言います。
また健康診断で貧血や赤沈の亢進があったため、医師を受診して高安病とわかったケースもあります。あたりまえのようですが、やはり、気になる症状があったら早めに受診するのが、病気の早期発見につながります。
また健康診断で貧血や赤沈の亢進があったため、医師を受診して高安病とわかったケースもあります。あたりまえのようですが、やはり、気になる症状があったら早めに受診するのが、病気の早期発見につながります。
ステロイド薬の治療が中心
ステロイド薬(プレドニン)の治療が中心になります。免疫抑制薬(エンドキサン、メソトレキセート)が併用されることもありますが、不妊などの副作用があり、注意が必要です。妊娠中は禁忌です。
血栓(血のかたまり)が血管に詰まる傾向があるため、抗血小板療法(少量バファリン、パナルジン、プレタール)が併用されます。高血圧もよくみられますが、通常の治療と同じです。大動脈の障害が強く、重い症状がある場合は、外科的な手術(再建術)を行うことがあります。これは、おかされた血管を正常な血管や人工血管と入れかえる手術で、現状では10~20%の人が適応になるようです。